昇格の決断「大好きな6期生とともに」

夕立が来そうだ
青空が暗くなった
もし雨が降ったら
心はどこへ隠すの?
雨雲が動いた
風もその向きを変えた
ずぶ濡れになっても
君のそばにいたかった

 

「夕立の前」。6期生が初めて参加した曲であり、一つの研究生時代を象徴する楽曲だろう。
始まりも終わりもこの楽曲とともにあった。

突然の発表

2015年3月26日、それは突然だった。
「AKB48春の単独コンサート~ジキソー未だ修行中!~」のサプライズ「春の人事異動」。

 

「松村香織、SKE48終身名誉研究生からチームKⅡに昇格」

 

その突然の発表に、松村香織は宮澤佐江さん(卒業生)に背中をたたかれて我に返った。
周りにいたSKE48メンバーから祝福を受けながら彼女はステージ中央へと向かった。

 

しかし、その心境は複雑であった。

 

コンサート終了後、すぐにぐぐたすに投稿 した。

 

「チームK2への昇格が発表されました。喜ばしいことなのにいろいろと頭と気持ちが追い付いていません。そして申し立ての権利がわたしにもあるみたいなので時間を下さい。ごめんなさい」

 

その夜には1コメダをアップしてその複雑な心境を吐露していく。

3月27日BBQ松村香織の今夜も1コメダ#378

 

「普通、昇格だったら昇格で選んだりとかもできないと思うんですけど、今回は人事異動という形の発表なので、私にも異議申し立てのお時間がいただけるということで、考えたいなという、意味でちょっと時間を下さいと、皆さんには言いました」

 

昇格。それは松村香織にとっても念願のもであったが、終身名誉研究生として覚悟を決めていたからこそ難しい選択であった。

 

「そうですね、昇格をしたくてもできなくて、ずっとやってきて、終身名誉研究生になって、研究生としてずーと活動しようと思って決めて、やってみて、今になって、昇格が発表されて、本当に、本当に悩んでますまじで。複雑なんか。こんなに悩むことあるのかなってぐらい」

 

ここまで応援してくれたファンに対しても不安を感じる。

 

「でね、どっちの選択をしても私のファンの人はみんながみんなついてきてくれるかすごく不安だし、贅沢ですよね。ぜいたくな悩みだなと思うんですよ」

 

同時にずっと気にかけてきた6期研究生への思いもある。

 

「もしチームに入ったとしたら、いま残っている研究生たちのこともあるし、新しく7期生が15人入って、しかも大好きな6期生をおいて私一人で先にチームに入るなんて、そんなことしていいのかなと思っちゃう部分もあるし」

 

一方で、今回の発表に対する運営の配慮も推測する。

 

「でも何か意味があって昇格の発表してくれたって思うから、そうやってふうに考えると、チームに入らないという選択もするのも失礼なのかなと思うし」

 

どうすべきなのか。何が正解なのか。

松村香織はファンの顔を浮かべながら語る。

 

「さんざんね、昇格できなくていつもやっぱどこかで悔しくて、泣いて、いっぱい話したのに、今度は昇格できるっていうのにこんなに悩んで、本当に自分は何をやってるんだろうと思うし」

「ファンの人はね、今でもね、握手会でどうしてもやっぱりチームに入ったかおたんが見たいですっていまだに言ってくれる人もいるし、でもこうやって選んだ道を応援してますと言ってる人もいるし、唯一無二の存在をいただいて、グループでね、みんな肩書がない中、そういうふうにやらせてもらったりとかもしてるし。本当にどうしたらいいんだろうって」

 

こうやって悩んでいることについて、昇格先のチームに対する申し訳なさも感じている。

 

「なんかKⅡのメンバーにもすごい申し訳ないし。KⅡが嫌だとかそういうのは一切なくて。チームが嫌だとかね。本当に複雑です」

 

しかし、どんなに悩んでいても松村香織は強い。

 

「でも私はね、そういう道を捨ててでも、研究生として自分でできることを一生懸命やろうと思って決めてきて。ファンの人にたくさん意見をもらっても決めるのは自分だから、最終的にね」

 

さらには、グループに対してまで思いを巡らしている。

 

「何が自分にとっていいのか。どの選択をしたらSKEのためにとっていいのか」

 

また、研究生でいたからこそさまざまなメンバーを見てきて、昇格の重さを感じずにはいられない。

 

「昇格したくてもさ、できないままさ、卒業していく研究生もさ、たくさん見てるわけだからさ。昇格したくてもできない子がいる中さ、こういういまチャンスをいただいててさ、なんかもうどうしたらいいんだろう」

 

そして、最後に不安を抱えながらもファンへメッセージを送る。

 

「どんな判断をしても、私についてきてくれるかわかんないけど、ちゃんと自分の意志が決まったときは、無理かもしれないけど変わらず応援していただけるとうれしいです」

 

大団円

3月31日、コケティッシュ渋滞中のリリースイベント。
ミニライブの3回目の参加者に研究生全員の名前があり、「これはもしかして」と期待せずにいられなかった。
この3回目のミニライブには6期研究生のファンを中心に早くから長い列ができていた。

 

ミニライブ終盤にマツムラブ!を研究生全員で披露。

その後、今村支配人が登場する。

今村支配人はSKE48の支配人としてはその日が最後であった。
彼のSKE最後の仕事は昇格発表となった。

 

チームS  山田樹奈さん

チームKⅡ  青木詩織さん( 4月11日動画

チームKⅡ  竹内彩姫さん( 4月11日動画

チームE  井田玲音名さん

チームE  鎌田菜月さん

 

現研究生全員の昇格が発表された。

そのときの映像は残念ながら公開されていないし、その映像が存在するかもわからない。

 

この発表と同時に松村香織もチームKⅡへの昇格を決める。
終身名誉研究生の襷をとる姿が、唯一の映像として、次期湯浅支配人の4月6日更新分ぐぐたす に掲載されている。

 

その夜に昇格を決めたことをぐぐたすで報告した。

 

「報告です。わたしはチームK2に昇格を決めました!!! そして今いる研究生全員の昇格が発表されました!」

「自分が面倒をみていた研究生が全員昇格するということでわたしも新たな一歩を進みたいと思います」

 

加えて、ここで衝撃の事実も打ち明けた。

 

「ちなみに過去に2回昇格のお話しを断ってるんです(笑)」

 

最後に、昇格した6期生を祝福する。

 

「おしりん、れおな、なっきー、さき、じゅな。昇格おめでとう!!!本当に嬉しいよ!!!一緒に過ごせて楽しかった♡」

2015年3月31日ぐぐたす投稿


翌日には個人ブログが開設された。5年半で初めての個人ブログである。松村香織の最初のブログ覚えていますか。ぜひその目で確かめてください。

リクエストアワー

昇格メンバーは、4月28日のアップカミング公演ファイナルを最後にそれぞれの場で活躍していた。

 

しかし、6期研究生時代はまだ終わらなかった。その努力は目に見える形となって現れた。

 

11月29日、「SKE48 リクエストアワー シングル・アルバム収録楽曲セットリストベスト30 2015」。

 

全員昇格して迎えたリクアワで、ファンの思いが爆発した。「神々の領域」、「12月のカンガルー」を抑えて、「夕立の前」が第1位となったのである。

 

この楽曲は、2013年当時の研究生に与えられたものであった。しかし、その参加者は、松村香織、犬塚あさな、6期生のみとなっている。

 

DVDのメイキングでステージに出る直前の姿が収録されている。松村香織はそのとき思わずつぶやいている。

 

「うれしい。本当に幸せ」

「うれしいよ。昇格してよかったみんな」

 

ステージに広がっていくメンバーの目はすでに潤んでいた。

 

楽曲披露後の松村香織のスピーチは、研究生生活のなかで、最も濃密な時間を過ごした6期生に向けての思いを語っている。

「ほんとに、そうですね、私とわんちゃんが研究生で残っていて、6期生のみんなが入ってきてですね、正直、本当に問題児ばかりで、あのときはわんちゃんと本当にどうしたらわかってもらえるんだろう、どうしたら研究生がいいって言ってもらえるんだろうというのを日々考えながらいろいろ指導してて、厳しいこととかも本当に言ったと思うんですけど、今日の2日間のみんなの成長の姿を見て私は本当にみんなが…」

「みんなが昇格してチームに入ってくれて本当によかったなと」

「今は別々のチームにそれぞれで活躍してるけど、またこうやって同じステージに立ててうれしいし、ここだけじゃなくてどんどんみんなも選抜に入ってもっともっと有名になってほしいと思います。みんなと出会えて本当にうれしいです。ありがとう」

 

その思いはぐぐたす・Amebaブログにも投稿された。

 

また、犬塚あさなさんは松村香織への感謝とともに6期生と過ごしてきた研究生時代をブログで振り返っている。

 

 

こうして松村香織の研究生時代は幕を閉じることになる。
そして、それは「正規メーン」として新たな出発のときでもあった。

 

「自分を信じて仲間を信じてエンジン全開よっしゃいくぞSKE48!」

 

記事

 

 


コラム は、有志の方々からの寄稿をもとに掲載しています。

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