2013年4月14日、名古屋、日本ガイシホールでの春コン「変わらないこと。ずっと仲間なこと」昼公演。
アンコール後、二曲披露し次の曲に行こうとしたときである。突然暗くなりモニターに映像が流れ出した。
「 特報!! 」
「 ついにSKE48で!! 」
「 ソロプロジェクト始動! 」
メンバーから「誰?誰?」と声が上がる。
「 そのメンバーとは・・・ 」
「 SKE48終身名誉研究生 松村香織 」
前日の 終身名誉研究生の涙の「1コメダ #165 からまさに急転直下であった。松村香織のソロデビューが決まったのだ。
ナゴヤドームでの初披露
それから四ヶ月後、8月16日、AKBコンサート初日「AKB48 2013真夏のドームツアー ~まだまだ、やらなきゃいけないことがある~」で松村香織のソロデビュー曲披露が行われることになった。曲名は、
「 マツムラブ! 」
プロデュースはHKT48指原莉乃さん。作詞のうえ選曲もしていただいた。曲はまさに王道アイドル。
そして、歌詞には松村香織の歴史が含まれている。例えば、
「茶髪なのは嫌かな…
ピアスしてて、いいかな…
ささいなことなのに、気にしてる」
これは松村香織の炎上事件の一部である。
衣装は事前に予算1万円ということは伝えられていた。
ステージに登場した松村香織が着ていた衣装は新聞紙でできていた。その新聞はこれまで松村香織やSKE48が記事になったものを集めて作られており、愛の詰まった衣装であったのである。
当時のAKBコンサート ナゴドメイキング1コメダ #216 と1コメダ #217 でもその様子は伝えられている。
その中ではモニター越しではあるがステージでのリハーサルや本番も収められている。
最後には、その場にいたAKB48グループメンバー全員での1コメダコールでしめられた。現在から見ても貴重な映像である。今だからこそぜひ見てほしい。
また、それを伝えた当時の記事はヤフーのトップにもなっている。
東スポ : https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/174190/
土砂降りの中での手売り
その半年後、SKE48のリクエストアワーにて「マツムラブ!」のMVがサプライズ公開された。
さらに、10月18日夜、CBCテレビにてスポットCMが1回だけオンエアされることも発表された。
そのCM後には、YouTubeにて芝劇場支配人から詳細が発表された。
「SKE48終身名誉研究生 松村香織 ソロデビューシングル「マツムラブ!」に関して 」
10月20日に「マツムラブ!」の発売が決定する。
1000枚限定でナゴヤドーム北駐車場にて本人自らの手売りをすることとなった。
手売り販売当日は、本降りの雨に加え、極寒という過酷な環境下であった。
それにもかかわらず1000人以上のファンが集まった。
その様子は「1コメダ」に収められている。その1(10月21日投稿) #246 とその2(10月24日投稿) #248 の両方を見てほしい。
どれほどこのCDに松村香織の思いがこもっていたかがわかるだろう。
手売りは朝8時から始まって終わったのは15時であった。この長い時間、松村香織は、消費税分の50円を自費で一人一人に手渡したり、並んでもCDを購入できなかったファンには手にサインを書いたりなど一人一人丁寧に対応した。
一連のことは記事にもなっている。
【エンタがビタミン♪】SKE48初のソロ・松村香織。デビューシングル『マツムラブ!』にファンが殺到。
また、週刊プレイボーイ連載開始当初からお世話になっている関根弘康氏の密着レポをぜひ読んでほしい。さすがの記事である。
<SKE48松村香織が怒った理由>デビューシングル『マツムラブ!』CD1000枚手売りイベント密着レポ!
さて、その記事のタイトルにもなっているが、手売りが終わった後、松村香織は怒りの投稿をしている。運営に怒られて投稿自体は消しているが、その内容は記事にもなっている。
SKE松村香織 手売り限定ソロCD転売に激怒「ふざけんなよ」
何度も転売してほしくないと言っていたのにもかかわらずオークションに出されていることを知って暴れたのである。そのようなところは反感を買ってしまうこともあるが、松村香織という人間のおもしろさでもある。
アカペラのマツムラブ!
コンサート・ツアー「SKE党決起集会。「箱で推せ!」」の横浜アリーナコンサートの二日間では、各日850枚限定で販売された。
二日目には、松村香織本人がグッズ売り場にきて、アカペラでマツムラブ!を披露するというサプライズも行っている。今ではメンバーがグッズ売り場に来ることは珍しくはないが、当時としては異例である。当然、両日ともすぐに完売した。
世界一かわいいブス
コンサート・ツアー「SKE党決起集会。「箱で推せ!」」のナゴヤドームでは3000枚限定で販売された。
これが完売すれば後日5000枚限定で販売されることもあわせて発表があった。
そのナゴヤドームコンサート二日目のことである。
中盤MCにバックステージから新聞紙衣装で乱入し、メインステージのMCメンバーと掛け合いを行う。
そして、松井玲奈さん(卒業生)に促されて松村香織自ら曲振りをする。
「聞いてください。マツムラブ!」
曲が始まるとナゴヤドームの観客全員での大かおたんコールである。
すべての観客が松村香織一人を見ているのである。間奏になって彼女は感謝の気持ちを伝える。
「みなさーん、マツムラブ3000枚完売しました。ありがとうございます。本当にここに来れたのはみなさんのおかげです。ありがとうございます。こんな私ですけれども、これからもよろしくお願いします。」
松村香織自身これで感極まってしまった。
その後の彼女の表情 、歌はもうそれはひどいものだった。
しかし、ここまでの道のりを知るファンはそれを見て笑いながらも涙せずにはいられなかった。
そのときの光景からだろうか。いつしか松村香織は
「世界一かわいいブス」
と評されるようになった。
後日、このフレーズを本人は選挙ポスターに使おうとしていたようである。それについては、山田樹奈さんのぐぐたす動画 を参照してほしい。動画の半ばでそのことについて語っている。
最後の販売
2014年6月29日、アップカミング公演~夏~初日の自己紹介MCにて松村香織から発表された。
「本日9時からマツムラル、ネット販売しまーす」
大事なところで噛んでしまった。
しかし、在宅の方やまだ手に入れられていない方には朗報である。5000枚限定で21時より発売されたが、30分程度で購入できなくなった。完売かと思われたが、実はシステムエラーで、その後販売を再開した。それでも間もなく完売となった。
これがCD「マツムラブ!」の正式な販売の最後であった。
これまでの合計販売数は10700枚。これが世界で存在するすべてである。
アルバムの収録曲に
SKE48 2ndアルバム「革命の丘」の収録曲のうち、シングルカップリング曲、劇場公演曲からそれぞれ8曲ずつがファン投票によって決まることとなった。
「マツムラブ!」はアップカミング公演のセットリストに入っていたため劇場公演曲としてエントリーされた。
そのランキングは2017年2月8日のLINELIVEの発売記念特番にて発表され、「マツムラブ!」は劇場公演曲として第3位にランクインし収録されることとなった。
第1位「恋を語る詩人になれなくて」
第2位「赤いピンヒールとプロフェッサー」
第3位「マツムラブ!」
第4位「シアターの女神」
第5位「クロス」
第6位「枯葉のステーション」
第7位「兆し」
第8位「手をつなぎながら」
これによって正規ルートで「マツムラブ!」という楽曲をいつでも手に入れられるようになった。
しかし、「マツムラブ!」のCDには特別なジャケット、DVDが付属していた。残念ながらこれらはもはや手に入れることはできない。
個性あるマツムラブ!
現在、マツムラブ!はチームKⅡ 0start公演の前座で使われている。
そこでは、KⅡメンバーの個性あふれるさまざまなマツムラブ!が披露されており、この楽曲の新たな一面を見ることができる。
これまで見てきたように、このマツムラブ!には長い歴史と松村香織の強い思いがある。そのことを少しでも思い起こしてこの楽曲を改めて楽しんでもらえればと思う。
最後に、SKE48シングル「12月のカンガルー」特典映像『松村香織的アイドルの愛し方』 より、ナゴヤドーム北駐車場での販売を思い返しての松村香織の言葉を記しておく。
「わざわざ足を運んできてくれる人がこんなにいるんだって思ったから、もっともっと頑張ろうと思ったし、本当にずっと支えてもらってたファンの人にやっと形として見せることができたなって思いました。」
コラム は、有志の方々からの寄稿をもとに掲載しています。